CH129

◆第129回 人文科学とコンピュータ研究会発表会

主査: 耒代誠仁
幹事: 鹿内菜穂、中村覚、西岡千文、橋本雄太

※重要・ご注意※
第129回研究会は、新型コロナウイルスの影響に鑑み、オンラインで実施することにいたしました。

【参加費】

種別金額
研究会登録会員無料
学会正会員2000円
学会会員学生500円
学会非会員学生1000円
非会員3000円

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会(IPSJ SIG Computers and the Humanities)では、下記の通り第129回研究会発表会の開催を予定しております。歴史、地理、芸術、民俗、文学、言語、社会などなど、様々な人文科学の諸領域での情報資源の記録、蓄積、分析、提供や応用に関わる研究発表をお考えの方はぜひ奮ってご応募ください。

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 日時 2022年5月21日(土)
 会場 オンライン開催
 発表申込締切 2022年4月7日(木) 2022年4月14日(木)
 原稿提出締切 2022年4月28日(木)
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(1)募集内容

  • 学生ポスターセッション 6-8件程度
    • 学生ポスターセッションの中で優秀な発表には、「奨励賞」が授与されます。
    • 学生のみなさま、奮ってご参加ください。
  • 一般口頭発表 3-4件
    • ショート:15~20分程度の持ち時間(質疑を含む)
    • ロング:20分~25分程度の持ち時間(質疑を含む)

※学生ポスターセッション/ロング/ショートいずれも2~8pの予稿の提出が必要となります(この範囲であれば枚数は自由です)。
※予稿のフォーマットは情報処理学会のページをご参照ください。

(2)申込方法

  • 申込書のページをご利用ください(なお、原稿提出はこちらのページから行っていただきます)。
  • 「研究会への連絡事項」欄に「一般(ロング)」「一般(ショート)」「学生ポスターセッション」の別を、必ずご記入ください。
  • 投稿システムで申込後、「講演申込完了のお知らせ」という件名のメールが自動配信されます。
  • 担当幹事より、「講演申込受理のお知らせ」という件名のメールで、整理番号とパスワード、原稿執筆の詳細が届き、正式受理となります。
  • 正式受理の連絡がない場合は照会先までご連絡ください。
  • 先着順にて、定足数に達し次第、締め切りとさせていただきます。
  • お申込み後、原稿提出時の発表ご辞退はお控えいただくようにお願いします。

(3)参加方法

参加申込を5月13日に開始しました。研究発表会当日(5月21日)までお申し込み頂けます。 参加者はマイページへの参加登録が必要です。

(4)発表インストラクション

発表方法については、下記の「CH129 ポスター発表における注意とお願い」をご参照ください。

◎CH129 ポスター発表における注意とお願い

プログラム

2022年5月21日(土)

10:45-10:55 開会挨拶

10:55-12:00 セッション1

10:55-11:15
(1) 画像処理を用いた絵画のフォーカルポイントとリーディングラインの検出手法の提案
○高橋冴大(同志社大学理工学部)
・稲垣圭吾(同志社大学理工学部)
・島田雄太朗(同志社大学理工学部)
・芳賀博英(同志社大学理工学部)

 本発表では,画像処理技術を用いた絵画のフォーカルポイントとリーディングラインの検出手法を提案する.本発表の研究の動機は「絵画はどのように見ればよいのか」という素朴な疑問である.絵画を見るときのポイントとなるのは,その絵画の主役を意味するフォーカルポイント(Focul Point)と,フォーカルポイントへ視線を誘導するリーディングライン(Leading Line)の認識である.フォーカルポイントは位置,コントラスト,明度などで示された「目立つもの」であり,リーディングラインは,絵画中の直線的なものである.これらをコンピュータの画像処理技術を用いて検出する方法を提案する.本研究の最終的なターゲットは絵画鑑賞支援システムの構築である.タブレット等にシステムを搭載し,鑑賞したい絵画を写真で撮影することにより,その絵画の鑑賞を支援するシステムの構築を目指している.

11:15-11:40
(2) 地方史統計資料における知的探索インタラクションのためのデジタル情報化
○中小路久美代(公立はこだて未来大学)
・藤原慎太郎(公立はこだて未来大学)
・寺沢憲吾(公立はこだて未来大学)
・山本恭裕(公立はこだて未来大学)
・川嶋稔夫(公立はこだて未来大学)
・木村健一(公立はこだて未来大学)
・松原伸人(株式会社SRA)

本研究が目指すのは,長期に渡って蓄積された多様な分野に渡る多数の統計表とのインタラクションにより,データに包含される情報の抽出,並置,統合,連携による知識の創出や仮説の生成を支える情報環境の創出と,それを可能とするデジタルアーカイブ手法の構築である.「函館市史:統計史料編」(函館市史編さん室編)は、昭和62年5月に発行された、明治初期から昭和後半にかけ本研究が目指すのは、長期に渡って蓄積された多様な分野に渡る多数の統計表を対象として、データに包含される情報のインタラクティブな抽出、並置、統合、連携を可能とする新たなデジタルアーカイブ手法の構築である。人々が、地元のミュージアムを訪ねて地域の移り変わりを学んだり歴史的経緯の面白さに触れたりするのと同様に、市史統計表データとのインタラクションを通して知識の創出や仮説の生成を支える情報環境を創出したいと考えている。「函館市史:統計史料編」(函館市史編さん室(編): 函館市、 1987)は、昭和62年5月に発行された、明治初期から昭和後半にかけての函館市史に関わる1285ページに渡る統計資料表を編んだものである。気象、行政、財政、漁業、農業、工業、風俗、水道・電気・ガス、教育、兵事等に係る、計317個の表が収められている。2020年より開始したStatsHakodateプロジェクトではこれまでに、この史料編の表が有する価値とそのデジタルデータ化による保存と展開を考察してきた。本稿では、印刷された統計表資料のデジタルデータ化技術の開発と、統計史料表とのデータエンゲージメントに向けた理論的考察および表データの液状化と結晶化を踏まえたデータアラインメントのデザインについて説明し、本プロジェクトの展望を論じる。

11:40-12:00
(3) IIIFビューワ「Mirador動画アノテーション対応版」の改良:動画アノテーションツールELANとの連携を目指して
○高橋洋成(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
・永﨑研宣(人文情報学研究所)
・本間淳(フェリックス・スタイル)

発表者の1人(高橋)はエチオピア少数言語の調査研究に携わっており、動画アノテーションツールELANを用いて、調査で撮影された動画に音訳、翻訳等を付している。このように作成されたアノテーション付き動画を、特別なツールなしに広く利用できるよう、IIIFリソースに変換した。また、IIIFビューワ「Mirador動画アノテーション対応版」を次のように改良した。(1) 動画の再生時間に追随して、アノテーション・パネルを自動スクロールさせる機能を追加した。(2) supplementing なアノテーションとしてWebVTTテキストを読み込み、動画上に字幕として表示する機能を追加した。

12:00-13:30 休憩

13:30-15:30 学生ポスターセッション 「(13:30-13:45 ショートプレゼンテーション、1名1〜2分程度)」

(4) 植民地台湾における保甲制度の成立と地方社会秩序の変容ーGISによる「総理」と「保正」の位置関係の視覚化
○内津マリノ(千葉大学大学院人文公共学府)

1896年に保甲条例の交付によって成立した植民地台湾における保甲制度は、台湾人を一定戸数ごとに「甲」「保」単位で組織化して、「甲長」「保正」と呼ばれたリーダーを警察と連結することによって、組織内の相互監視と治安維持を図った制度である。総督府は保甲を台湾(中国)の伝統的な制度であるとみなして保甲条例を公布したが、この「甲長」「保正」に充てられた人物は、総督府が人物調査の上で選択されていた。さらに、清代台湾で実際に機能していた秩序維持の方法である「総理」という役割は、保甲制度内の「甲長」「保正」と性質的に異なっていた。植民地統治機構の成立期に、清代台湾の地方社会で重要な役割を果たしていた「総理」と、総督府の統治の便宜上配置された「甲長」「保正」の位置関係には、どのような違いがみられるか。GISを用いて配置場所を確認し、それが植民地期以前に採用されていた、地方社会における秩序維持の方法とどのようにすれ違うのかを考察する。

(5) 自己呈示の意図がふるまいに与える影響 -装いとしてのお辞儀-
○徐韵(同志社大学)
・上野楓(同志社大学)
・坂本晶子(ワコール人間科学研究所)
・正田悠(立命館大学)
・阪田真己子(同志社大学)

他者の存在を意識し、他者が自分に対して抱くイメージを操作することを自己呈示(self-presentation)という。自己呈示は、他者に対して必ずしも意図的に強く意識して行われるとは限らず(福島,1996)、日常的な行動の中に当たり前のものとして組み込まれていることが知られている(長谷川,2005)。そこで、本研究では自己呈示の手段としての日常的行動として「お辞儀」に着目し、自己呈示の意図の強さがお辞儀動作にいかに反映されるかを確かめる実験を行った。実験の結果、自己呈示の意図の強さによって、お辞儀動作が変容することが定量的に確かめられ、文化的な行動としての「お辞儀」が、個人の「装い」としての自己呈示機能を果たしていることが示された。

(6) ARを用いた舎利容器の展示支援コンテンツの制作と博物館における運用
○阪口直樹(龍谷大学大学院理工学研究科)
・曽我麻佐子(龍谷大学大学院理工学研究科)

本研究では,文化財の博物館展示におけるデジタル技術の活用を目的として,ARを用いた舎利容器の展示支援コンテンツの制作を行った.舎利容器に描かれた人物の画像をARマーカとし,タブレット端末のカメラを舎利容器のレプリカにかざすとARコンテンツが視聴できる.舎利容器の天人にかざすと天人が持つ楽器の3Dモデルの重畳表示と音声再生,舞人にかざすと舞人の3DCGキャラクタによるアニメーションの重畳表示が可能である.博物館において実物の文化財と連携したシステムを運用するためには,展示物や来館者同士の距離,鑑賞時間,照明条件の制約がある.これらの制約を満たすために,展示配置の検討,直感的に行えるような操作方法の統一,ARマーカの認識率を上げるための画像加工を行い,実際の博物館において展示運用を行った.

(7) ハンディ型スキャナによる東海大学所蔵 文明コレクションの3Dデータベース構築
○鴨下真由(東海大学文学研究科史学専攻)
・野澤峻大(東海大学文化社会学部ヨーロッパ・アメリカ学科)
・吉田晃章(東海大学文学部文明学科)
・今西規(東海大学医学部医学科)
・山花京子(東海大学文化社会学部アジア学科)
・松前ひろみ(東海大学医学部医学科)

近年, デジタルアーカイブでは, 3Dデータの活用も始まっている. しかし3Dスキャン機器はデジタルカメラでの撮影に比べて, 特殊な据え置き型の機器が多く, 撮影する際には撮影者のスキルが求められるほか, コストもかかるため小規模な施設では導入が進んでいない. そこで本研究では比較的低コストで, 場所を選ばない持ち運び可能なハンディ型の3Dスキャナに着目した. この3Dスキャナを用いて, 東海大学が所有するアンデス文明及びエジプト文明コレクションの3Dデータの取得を進め, データベースを構築中である. 収蔵品を3Dスキャンした結果, スキャナが得意とする対象物と苦手とする対象物が明らかになるなどの知見を得た. 本発表では, ハンディ型3Dスキャナを用いた収蔵品の3Dデータ化の過程で得られた知見を報告する.

(8) 縦譜の知識共有を目的とした機械可読な楽譜フォーマットに関する検討
○関慎太朗(東京大学大学院人文社会系研究科)

楽譜のデジタル化には様々なメリットが存在し,そこから得られる用益は現在の邦楽文化が抱える担い手不足や教材不足といった課題の解決に向けた一つの契機となりうる.しかし,現在主流となっているMusicXMLやMEIといったデジタル楽譜フォーマットは西洋音楽で用いられる五線譜をベースに構築されてきたため,五線譜とは記述スタイルが大きく異なる邦楽楽譜に対して既存の楽譜フォーマットをそのまま適用させることは難しく,現状のデジタル邦楽楽譜はあくまでも楽譜の紙面構成を再現する段階にとどまっている.本稿は邦楽楽譜のなかでも縦譜を例として取り上げ,その内部に記述された音楽的知識の共有を実現するために求められるフォーマットについて検討する.縦譜の特徴や役割なども踏まえた議論を通して,機械可読な楽譜を用いた縦譜の知識共有に求められるフォーマットの水準として3つのレベルを提示している.

(9) テキストマイニング技術の解釈主義的研究への応用の検討 -Twitterにおける言説分析を事例に-
○小林洵也(千葉大学大学院人文公共学府)

発表では、Twitterにおけるヴィーガン実践者によって発信される投稿を中心としたヴィーガン言説を題材に、テキストマイニング技術を活用してどのように解釈主義的研究を行うことができるのかについて検討する。発表者が現在専攻する分野は文化人類学であり、学部論文ではTwitterから特定多数のアカウントによる近年の全投稿と、投稿へのリプライや引用リツイートを自動で収集する手法として、Twitter APIとJavaScriptを使ったスクレイピングを行った。しかし、その際は形態素解析などの高度な技術は使わずに、最終的には収集したテキストを目で読みナラティブデータとして扱うに留まった。今回はそれを拡張し、より高度なテキストマイニング手法を扱った質的分析と研究対象の量的な抽出法が、エスノグラフィーのような人類学における主要な研究方法論にどのように応用可能であるかについて検討考察する。

(10) 近世における呉音・漢音の勢力と混読現象の展開―『日本語歴史コーパス』を用いて―
○大島英之(東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程)

本発表では、『日本語歴史コーパス』(CHJ)所収作品を対象として、日本語における一字漢語・二字漢語の字音体系(呉音か漢音か)を自動的に分析し、①呉音・漢音の勢力、ならびに、②二字漢語において呉音と漢音を混ぜて用いる現象(以下「混読現象」)について、近世における変遷の一端を明らかにすることを目指す。対象とするコーパスには、中世末期の「キリシタン資料」「狂言」、近世前期の「近松浄瑠璃」、近世後期の「洒落本」「人情本」を選んだ。これらのコーパスにおける形態論情報のうち、「書字形」(仮名を含む場合は「語形代表表記」)ならびに「語形」のデータを、発表者作成の「呉音漢音音形対立表」(呉音・漢音の認定は『三省堂五十音引き漢和辞典 第二版』に依拠)のデータと照合することで、各字の字音体系を自動的に判定・集計した。作業に際しては、Pythonのpandasライブラリを使用した。この結果、①中世末期から近世後期にかけて、漢音が勢力を拡大していることが確認された。また、②呉音漢音を混ぜ読みする漢語の割合については、近世を通じて増加しているものの、異なり数と延べ数とで増え方に若干の差が見られた。江戸時代には、儒学の奨励・寺子屋教育により漢音が広まったことが指摘されているが、その一端を定量的に確かめることができた。ただし、今回の分析には、原本の表記は漢字のみで、校注者が読み方を推測した漢語が多く含まれている。原本に忠実な翻刻テキストが底本となっている「狂言」「洒落本」「人情本」コーパスについては、「原文文字列」と「振り仮名」の情報を直接に用いることで、より厳密に語形を確定できる例に限定することができると想像されるが、検討中である。また、文体差の影響についても考慮の余地があり、今後の課題としたい。

15:30-15:40 休憩

15:40-16:45 セッション2

15:40-16:00
(11) イブン・アラビー『叡智の台座』とその注釈書に対するテキスト計量分析
○石田友梨(岡山大学学術研究院社会文化科学学域)

イスラーム神秘主義を代表するイブン・アラビーの『叡智の台座』には、多くの注釈書がある。『叡智の台座』の本文に対する注釈の長さは、注釈者にとって重要な部分の指標となりうる。『叡智の台座』の本文を引用し、その後に注釈を述べていく形式となっているアブドゥッラフマーン・ジャーミーの注釈書を例に、本文と注釈の長さの比率から、イブン・アラビーの思想の鍵概念を計量的に明らかにすることを試みる。

16:00-16:25
(12) CHISE における HDIC 統合の試み
○守岡知彦(京都大学)

平安時代漢字字書総合データベース (HDIC) に収録された天治本新撰字鏡 (TSJ), 宋本玉篇 (SYP), 高山寺本篆隷萬象名義 (KTB) の CHISE 文字オントロジーとの統合と HDIC Viewer との連携の試みについて述べる。HDIC が記述対象とする古辞書データには形音義の各側面が含まれており、見出し字データが利用可能なものに関しては HNG 等と同様な歴史的な字体データとしての側面がある一方、音価や字義・語義に関する側面もあり文字間の関係の基礎資料としての側面も存在する。また、HDIC には古辞書間の引用関係等の関連性に関するデータも存在し、漢字のオントロジーの典拠データとして有用であると考えられるが、古辞書はその記述が斉一ではないため、各テキストが持つ情報を十全に構造化しその全てを取り込むことは必ずしも簡単ではない。本発表では現時点での取り組みについて報告するとともに諸課題について議論したい。

16:25-16:45
(13) デジタルアーカイブにおける実寸比較の実現に向けた実装と課題
○永﨑研宣(一般財団法人人文情報学研究所)
・本間淳(フェリックス・スタイル)
・青池亨(国立国会図書館)

現在のデジタルアーカイブの多くは、実物をデジタル撮影した画像を掲載している。そのなかでは、現物のサイズを確認できるように定規を画像に写し込んでいるものが多く見られる。これは目視でサイズを想定しながらデジタル化資料を閲覧する際にはきわめて有用である。一方、関連のある複数の画像を対比したり、重ねて透過することは、デジタルアーカイブに搭載されたコンテンツの利活用方法として有効であるものの、この場合には、この画像中の定規は、目視でサイズをあわせるべく画像を縮小拡大しながら調整する際の参考情報でしかなかった。そこで、筆者らは、二つの画像に写し込まれたそれぞれの定規を画像認識によって比較し、画像サイズを自動的に調整するモデルを考案し、それに沿った実装を開発した。本発表では、このモデルと実装について報告し、今後の課題を提示する。

16:45-17:00 CH研究会奨励賞受賞者発表等・閉会

お問い合わせ先

ch-madoguchi■jinmoncom.jp(@を■に変更しています )


添付ファイル: fileCH129ポスター発表における注意とお願い.pdf 669件 [詳細]

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Last-modified: 2023-07-05 (水) 18:01:16